1、真面目なボーカリストほど声帯ポリープになりやすい

東京で20数年、プロボーカリストのボイストレーニングをしていて、一番に思ったことは、

真面目に歌の練習をしているボーカリストほど、声帯ポリープや声帯結節になりやすい、ということです。

初回のレッスンでボーカリストたちは必ず眉をひそめて私にこう相談します。

「声が出まません。長く歌えなくなりました。休めれば治っていた時期もあったのに、休ませるだけでは、喉の状態が回復しません。どうしたらいいでしょう。」と。

 

ひとつ答えがあるとすれば、すべてこれは、真面目に歌の練習をし過ぎた結果です。

喉という楽器の特徴を知らずに。

 

喉の98%は筋肉でできています。

ということは、使えば疲れるということ。

 

どんなに効率的なボイストレーニング を行なっても、喉が筋肉でできている以上、使えば疲れます。

歌えば疲労がたまります。

声帯は女性で1cm、男性で2cmくらいの小さな筋肉。

例えば「ラ」の音を出そうとした場合、一秒間に声帯筋を440回の振幅をさせることになります。

体の中でももっとも早く動く筋肉。

そのオクターブ上の「ラ」であれば、1秒間に880回の振幅。

J-popではよく使う音です。ボーカリストたちは普通に一秒間に880回、声帯筋を振幅させることができます。

これだけ早く動かせば、誰だって疲れます。これが喉という楽器のシステムです。

問題は、同じ曲を何度も何度も繰り返し練習する練習方法です。

1日に6時間とか8時間、同じ曲を何度も歌い、音程やリズムのチェックに余念のないボーカリストたち。

この小さな筋肉を同じタイミングで同じように伸ばしたり縮めたりするわけです。

筋肉ですから、疲弊します。

サビのところにくれば、喉まわりの筋肉が総出でギュッと縮むのです。これを何度も繰り返す。

筋肉の仕組みとして、筋肉は動作を覚えるのです。

このタイミングでここまで縮めるとか、このタイミングでここまで緩めるとか。

そうしたタイミングと伸縮の程度を覚えることにより、運動効率を上げようとする訳です。

同じ曲を何度も歌うと、確かに歌の完成度は上がるでしょう。

それは筋肉にタイミングや音程を覚えるというシステムがあるからです。

そのため、同じ部位を同じタイミングで何度も何度も収縮させれば、その部位が疲弊していくのは、当然のことなのです。

 

スポーツジムで行うトレーニングに例えると分かりやすいかもしれません。

同じ重さのダンベルを1日6時間から8時間、上げ下げさせるようなトレーニングはありません。

筋肉が疲弊することがわかっているからです。

通常は筋肉疲労を効率よくさせ、結果を出すトレーニングを行います。

つまりダンベルの重さをどんどん変えていく。

重さを変えていくと、筋肉はそれに対応しようと柔軟で強い筋肉に変わっていくのです。

こうしたことから、歌の自己トレーニングで大切なのは、喉の筋肉が伸縮のタイミングを覚えないよう、練習曲を複数にすることが大切です。

できればターゲット曲とキーやテンポがあきらかに違う曲を選んだほうが効果的です。

これにより、練習量による喉の疲弊はかなり少なくなり、ポリープなどをつくるリスクを回避できるようになります。

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