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6.加齢は言い訳。
声年齢はコントロールできることを知ろう。

 

高音が最近出ない・・・

「最近声の出が悪く、昔なら平気で出していた高音が最近出ない」という悩みを持つボーカリストたち。

まず、声を聴かせていただきます。中音域から半音づつあげてゆき、最後には昔は楽に出していたという音域まで声の出し方を聴いていきます。これ以上出ないという音域まで聴かせていただきますが、ほとんどのボーカリストは、かなり早い段階から、高い音域をベルトで歌っています。

冒頭で書いたように、ベルトとは、地声を張り上げて高い音程を歌う歌唱法。

ベルトで高い音を出すためには、肺から出す空気のスピードを極端に上げていかないと、高い声が出ません。

なので、高い音イコール強い声になります。

言い方を変えると、強い声を出さないと高い音が出ない。

「当たり前じゃん」というような声が、聞こえてくるようですが、いやいや、そうではないのです。

●ミックスボイスという発声法

ミックスボイスという発声法をご存知でしょうか。ミックスボイスとは、小さな声でも高音が出せ、高音でのロングトーンも可能にする発声法です。

肺が出せる呼気の分量は決まっています。大抵の場合3リットルくらいでしょうか。

息を強く吐けば3リットルはすぐになくなってしまうので、ロングトーンは難しくなります。つまり高音を出すために強い息を吐く方法しかない歌唱法では、声帯はいつも台風の中、強い風に痛めつけられているのです。

それを続けていけば声帯筋は固まり、声帯は自分を守るようになるため、硬く身構えるようになります。毎日試合をしているレスラーが殴られても殴られても痛みを感じないよう面の皮が厚くなるように、毎日高い声を出そうとベルト唱法を多用しているボーカリストの声帯は、少ない息ではうんともすんとも言わないように硬くなっていきます。

硬くなればなるほど、どんどん高い声が出なくなります。その先は音程が当たらなくなります。

音程を当てるというのは、決められたテンポの中で声帯筋の収縮伸展を繰り返す作業。

硬い声帯だとテンポの中で思ったように動かなくなります。これがベルトの結果。

このような歌い方を続けると高い声は出にくくなり、最後は嗄声、小さな息では動かない声帯筋になっているので、枯れた息の多い声にならざるをえません。声が出しにくくなる原因は加齢だけではないのです。

●年齢に関係ない発声法とは

若くても無茶をすれば声帯は劣化します。

正しい発声法を身につけ柔軟な声帯を維持することができれば、年齢に関係なく声の可能性は広がっていくのです。

声帯筋が硬い、柔らかい、と言いますが、声帯筋の柔らかさを計測するような機材はありません。しかし自分で体感する方法はあります。

ドレミファソラシドと音階を小さな息で歌っていき、どこまで上の音域を歌えるか、声を出していきます。高くなるにつれ、どんどん呼気のスピードを上げ、大きな声にしていくことは禁止。

すると今まで大きな声なら高音が出ていたボーカリストでも、驚くほど高音が歌えていないということに気づくはずです。まだ声帯筋が柔らかかった頃の声を取り戻したいなら、声帯を痛めつける歌唱法も原因のひとつだと知ることが重要です。

私はベルト唱法を全て否定しているのではありません。魅力的な歌唱法です。

しかしいたずらに声帯を酷使する歌唱法だけで押し通すのではなく、使うべきところではベルトを使い、声帯を守る発声法も身につけることができたら、声の加齢を必要以上に恐れる必要がなくなると思いませんか。

声帯への負担が少ないミックスボイスという発声法を学んでみてはいかがでしょう。

自分の歌い方の弱点を知ることは、ボーカリストとしての進化へと繋がります。

こうした知識は何か問題が起こった場合の対処の基準にもなってゆくはずです。

多くのボーカリストたち、またその周辺のスタッフの皆様方、喉はオーガニックな楽器です。

正しい知識を身につけることで、すこしでもトラブルをなくし、ボーカリストたちが長く歌える環境をつくることこそ、大切なのではないでしょうか。

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