羽島ボーカルアカデミー松本校 ボイストレーニング
5. 今日は雨。ボーカリストと天気の関係
「なんか最近、声が重くて調子が悪い」と思う時はありませんか。日々、自分の喉に神経を配り、夜は加湿器で喉を湿らせてから寝るとか、睡眠時間をきちんととり、食事にも気をつけていても、避けられない状況があります。
それは、雨の日。
梅雨、台風、など、低気圧が与える身体への影響はとても大きい事を知っておくといいでしょう。梅雨シーズンになると私はボーカリストのみなさんに「喉の動きが悪くなりますよ」と伝えることにしています。大抵のボーカリストたちは驚いた顔をします。
理由を説明しましょう。
人間の体は地球上に生きているかぎり、気圧にさらされます。
1気圧、通常は地球上の平地の平均の気圧に近い値。
760mm水銀柱=1013.25mb、これを1気圧といいます。
つまり、常時、人間の体は上から気圧で押さえつけられている状態なのです。しかし、梅雨のシーズン、この気圧が低くなります。
よく言う低気圧。低気圧とは、気圧の押さえつけがゆるくなる事を言います。ゆるくなるとどうなるか。
身体は膨張します。
身長が少し高くなるくらい、縦にも横にも伸びてゆく。
別に何センチという変化ではありません。ほんの少し。
それでも縦にも横にも前にも後ろにも身体は膨張するのです。
声帯を動かすガソリンの役割をしているのは血液中の酸素です。酸素が血管を通って身体を駆け巡りながら、エネルギーを循環させていきます。
1気圧の時に身体を駆け巡っていた血流は、低気圧により膨張した身体を駆け巡らなければならなくなり、酸素の取り込みがいつものようにできなくなります。
酸素は声帯を動かすガソリンなので、ガソリン切れの状態になり、梅雨のシーズンは「声が出しにくい」と、ボーカリストたちは感じるようになるのです。
特に女性ボーカリストはこの気圧に敏感です。
喉は楽器です。
それもすべて筋肉と粘膜でできているという、オーガニックな楽器なので、天気や、環境の中で左右されるのは当たり前。
そのことを知っていれば、通常よりウォーミングアップに時間をかけるなど対処方法が考えられるので、より効率のよい状態で歌うことができるようになるのではないでしょうか。
喉頭蓋(こうとうがい)って?
声を出す仕組みを知ろう。
声の不調が続き、練習方法が悪いのか、原因が分からず不安になることはありませんか。
声がくぐもって、喉に何かつまっているような感じが続くことはありませんか。
大抵の場合、ボーカリストたちは喉の状態が悪くなると、原因を探し、自分を責めるようになります。
そんな時は、まず、「よく眠れているか?」「重大なストレスを抱えていないか?」など生活習慣を見直すことをうながします。
「曲ができないので睡眠不足が続いている」、とか「リリースした曲の売れ行きが気になって落ち着かない」など、思い当たることが出てくるかもしれません。
声の不調の原因は、様々なストレスにある場合が多いのです。
その理由を説明しましょう。
私たち人間は口から食べ物と空気を取り入れています。食べ物や飲み物は胃に、空気は肺に入るよう設計されています。
いったん入った食べ物や空気を胃側と肺側に分別するために、喉の奥に「喉頭蓋」という分別機があります。
ネットで「喉頭蓋」と調べると喉頭蓋の形状が出てきますが、しゃもじの格好をした蓋(ふた)のようなもので、結構な大きさがあります。
これが立っている(開いている)ときは肺から吐き出す空気をストレスなく声帯に吹き上げるので、声帯は振動し、声や歌になっていきます。
しかし、何かの原因でこの蓋が閉じてしまうと、肺からの空気が思ったように吹き上げることができなくなるので、声も出しにくくなるわけです。
これが喉頭蓋の誤作動。
この蓋の開閉は、人間が開けようとか閉めようとしてもできません。
つまりは自分の身体に任せるしかない筋肉で、これが誤作動を起こすと、喉がつまっているような感覚になります。
実際に肺から空気が出ていかないか、もしくは吐いた空気が効率よく声帯まで上がってこないせいで、声が出しにくいと感じるのです。
こうした状態は精神的なことに原因が多く、過剰なストレスを抱えると誤作動を起こしがちになります。
ボーカリストとしては、喉頭蓋の誤作動を起こさないよう、健康な身体だけではなく、健康な精神状態を保つことが必要になります。
考えても仕方ないことは考え過ぎずにさっさと寝るとか、日常的にストレスを切り離すように心がけ、歌う時に、歌に集中できる精神状態をつくりましょう。